未来の交通手段がここにあります。
詳細路上にせよ宇宙空間にせよ、新しい領域には厳しい条件がつきものです。そうした状態に立ち向かうために、産業界は化学に目を向けています。
業界や用途を問わず、一貫した目標が存在しています。それは、コストや性能で妥協することなく効率を高めることです。生産ダウンタイムの削減を目指す産業用機器メーカーでも、部品寿命の延長を目指す航空宇宙サプライヤーでも、燃費効率の向上を目指す自動車メーカーでも、求められるのはイノベーションです。多くの場合、イノベーションは、高温、腐食性の化学薬品、超高圧など、厳しさを増した動作条件に伴って起こります。
自動車産業の例を挙げましょう。米国環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)が2025年の企業平均燃費目標を2017年の基準から49%の向上になる23.1703 km/L(100 kmあたり4.3リットル)に設定したことに伴い、燃費基準の向上に対応するためエンジンサイズが縮小されています。EUの規制はさらに厳しく、2021年の目標は100 kmあたり5.6リットルです。こうしたエンジンサイズの縮小は、ボンネット内の温度の大幅な上昇と関連しており、2000年代初頭の120 ℃から、現在では200 ℃近くまで上昇しています¹。自動車メーカーは、どのようにして性能を犠牲にすることなく、この温度の変化に対応しているのでしょうか。各メーカーは化学産業に目を向け、Krytox™(クライトックス™)高性能潤滑剤などの高性能な材料や部品に着目しました。
約150年前の技術である内燃機関にほぼ全面的に依存している業界にとっては特に、上で述べたような基準をわずか数年で実現することは大きな飛躍です。電気自動車やハイブリッドカーは業界がこの基準を満たすために貢献できますが、あるレポートの予測によると、2025年までに電気モーターを搭載する自動車は全体の25%に過ぎません²。
しかし、化学産業の貢献もあって、自動車メーカーは従来の内燃機関の技術で、この野心的な効率目標を達成するための新しい方法を見出しつつあります。例えば、Chemours(ケマーズ)は、多くの用途で数年から数十年という長期間効果が持続する合成潤滑剤、Krytox™(クライトックス™)を提供しています。また、ごく限られた状況を除いて完全に不活性であるため、航空宇宙、自動車、食品加工、燃料、発電など、多くの産業で必須の成分になっています。
厳しくなった燃費要求を満たすため、自動車業界では従来の4気筒エンジンから3気筒へのダウンサイジングが進んでおり、欧州のある自動車メーカーでは2気筒車も登場しています。小さくなったエンジンで大きなエンジン性能を得るために、メーカーはターボチャージャーを追加しています。実際、米国のある自動車メーカーによると、1.0リッター3気筒ターボエンジンのほうが、従来の1.6リッター4気筒エンジンよりもパワーがあるとのことです。³
ただし、ターボチャージャーを動かし続けることは容易ではありません。最大300,000 rpmで回転するターボチャージャーは、より小さなスペースでより多くのエネルギーと熱を生み出します。熱量が増え、タービンの回転数が非常に高くなることを考えると、ターボはすぐに燃え尽きてしまいそうです。適切な工業用潤滑剤がなければ、そうなると思われます。
幸い、Krytox™(クライトックス™)潤滑剤は、ますます過酷になっているこうした環境下でも十分に機能します。従来の潤滑剤では、高熱により故障や焼き付きが発生する場合がありましたが、Krytox™(クライトックス™)製品では、そのようなことはありません。Krytox™(クライトックス™)潤滑剤は、グレードによりますが、-70 ℃から+399 ℃までの特定温度範囲で使用することができ、純ニッケル製の容器では劣化や分解が起こりません。炭化水素と違って不燃性のため、燃えたり炭化したりすることはありません。
自動車のエンジン内部の環境が厳しくなる一方で、車内環境は居心地の良さが増しています。エンジンマネジメントシステムの進化により、エンジンだけでなく、電気モーターの静粛性も向上しました。ただし、これまでエンジン音で隠されていた軋みや鳴きが、ドライバーや同乗者に聞こえるようになったため、新たな課題となっています。
Chemours(ケマーズ)は、自動車産業が直面する、これまでとはまったく異なるこの新しい課題に注目しました。Chemours(ケマーズ)の事業開発マネージャーであるRob Frenchはこう話します。「従来のグリースを塗ればとりあえず静かになります。ただし、30,000 kmも走れば、グリースが乾燥したり、周囲のプラスチックに染み込んだりして、軋みが再発するかもしれません」
しかし、Chemours(ケマーズ)はここでも対策を練り上げることができました。Frenchによると、「Krytox™(クライトックス™)製品は乾燥・劣化せず、車の寿命を通して効果が長く持続するため、この問題を解決できます。一度塗ってしまえば大丈夫です」
このような特性を持つKrytox™(クライトックス™)潤滑剤は、さらに過酷な環境である航空宇宙分野でも活躍しています。航空機、衛星、宇宙船に使用されているこの工業用潤滑剤は、極端な温度、圧力変化、放射線、真空などに耐えるように設計されています。
高度な航空技術には、温度や圧力の変化サイクル、高レベルの機械的ストレス、長いメンテナンス間隔など、多くの厳しい条件が伴います。厳しい気候の中で使用される無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle:UAV)の部品寿命を延ばしたり、航空機の燃料ポンプやヘリコプターの油圧ポンプのスプラインを長期間にわたって潤滑したりする際に、Krytox™(クライトックス™)潤滑剤がその真価を発揮します。
地球の大気圏外に出ると、さらに過酷な状況になります。例えば、宇宙服に適した潤滑剤を見つけるのは非常に困難です。宇宙服の中は加圧されていますが、外は真空の宇宙空間で圧力ゼロです。さらに、宇宙飛行士が太陽の光を浴びる場所と浴びない場所を行き来することで、外皮は何百度もの温度変化を受けることになります。Krytox™(クライトックス™)は広い温度範囲で潤滑性を維持し、また、従来の潤滑剤のように接合部から染み出すことがないため、こうした極めて過酷な環境でも宇宙服が機能します。
ロケットモーターは、さらに過酷な条件にさらされます。暖かく大気圧がある地表から冷たい真空の宇宙空間まで移動する間、途方もない振動を伴いつつ、膨大な量のエネルギーを供給しなければなりません。ここでもKrytox™(クライトックス™)は、燃料や酸素を供給するタービンやポンプなど、ロケットモーターの多くの可動部品の潤滑剤として機能します。
Krytox™(クライトックス™)潤滑剤のすべてのバッチは、実質的に特定の用途向けにカスタマイズされています。オイルまたはグリースとして使用でき、20種類の基本的なバリエーションがあります。とはいえ、食品製造、宇宙衛星工学など、幅広い分野で、特定の用途に合わせて潤滑剤の特性を調整するために、Chemours(ケマーズ)のエンジニアもお客様と力を合わせます。配合を調整して、耐食性や導電性などの特性を付与し、低温の宇宙空間やターボチャージャーの焼け付くような熱さの中でも機能するようにします。
技術が進歩しても、2030年はおろか、来年の課題すら予測することはできません。だからこそ、Chemours(ケマーズ)は日々お客様と対話し、問題を予測してソリューションをカスタマイズする方法を模索しています。
¹出典:http://pages.chemours.com/rs/509-VCL-038/images/Whitepaper_Auto_101_2017edits.pdf
²出典:http://www.goldmansachs.com/our-thinking/technology-driving-innovation/cars-2025/
³出典:https://www.economist.com/news/science-and-technology/21679767-internal-combustion-engines-are-getting-smaller-more-economical-and-cleanerall