石油産業やガス産業で成果を向上させるグリコール酸
油田や石油精製の用途において、グリコール酸は浄化やスケール除去の工程を強化します。この酸はまた、配合された製品に望ましくない生物学的または化学的酸素要求量を加えることなく、生分解できる形での金属錯化を可能にします。
グリコール酸は鉱酸に比べて反応が遅いため、坑井仕上げ時の酸処理に役立ちます。原油の脱塩、坑井の酸処理、合成掘削泥水もグリコール酸を利用しています。
グリコール酸はリン酸塩を含まず、生分解性があり、環境中に蓄積しません。この不燃性、耐腐食性のグリコール酸70%テクニカルグレードには以下の特性があります。
- 低臭性
- 低毒性
- 低蒸気圧
グリコール酸の働き
グリコール酸は、塩酸やスルファミン酸と併用することで、浄化作業や水攻法での鉄分の析出を防ぐことができます。また、有害な沈殿物を効果的に除去し、鉄または銅システムへの腐食ダメージを最小限に抑えます。
スケール制御と修復(レメディエーション)
グリコール酸は、井戸や生産設備に含まれるさびやスケール、微粒子を除去します。グリコール酸は金属イオンと錯体を形成して可溶性塩となり、井戸から容易に汲み上げることができます。井戸の金属部分の腐食が少ないため、機器にダメージを与える可能性が低くなります。その強い酸性化作用により、炭酸塩系のスケールを除去します。
水平坑井刺激
グリコール酸は、比較的反応が遅いため、完全に反応する前に、より深く地層に浸透します。その特性はワームホールの形成拡大につながります。グリコール酸は腐食を伴わずに塩酸と同量の炭酸カルシウム(CaCO₃)を溶解するためです。
石膏の除去
石膏、つまり硫酸カルシウム(CaSo₄)のスケールは、配管を塞ぐ硬い堆積物で、除去するのが困難です。グリコール酸アンモニウム、リンゴ酸アンモニウム、水を配合したスケール除去液を使用したケーススタディでは、スケール除去液を配管内に注入し、22時間放置しました。このワンステップの手順により、CaSo₄スケールを85~100%除去し、プロセスのダウンタイムも短縮できました(通常48~72時間かかるスケール除去を24時間で完了)。
ナフテン酸金属塩の溶解
ナフテン酸塩は、シクロペンタンやシクロヘキサンなどの飽和環状炭化水素を含むカルボン酸です。グリコール酸は、金属カチオンを求めてナフテン酸と競合し、水溶性のグリコール酸塩を形成します。また、グリコール酸は、ナフテン酸塩の溶解性や相分離を変えることで、プロトン化を促進できます。プロトン化したナフテン酸は、イオン化したナフテン酸よりもはるかに油溶性が高くなります。
水溶性有機物の除去
石油は主に分散した有機物で構成されており、一部の有機物はかなりの濃度で水に溶解します。重力を利用した分離方法では、水溶性有機物(water-soluble organics:WSO)は除去できません。WSOは、一般的なpH値で水に溶解し、生産水にも存在します。
地下から汲み上げられた石油は水と混ざっており、業界ではこれを「生産水」と呼んでいます。海洋プラットフォームでは、生産水は水溶性有機物(WSO)が十分に少ないレベルまで浄化され、船外に排出されます。WSOは、蒸発したヘキサン抽出物の極性部分であり、生産水中の溶存有機物や極性有機物を含みます。
生産水の船外排出は世界の多くの地域で認められていますが、排出制限の対象です。例えば、メキシコ湾では、生産水中の炭化水素は29 mg/l(月平均)に制限されています。米国の規制では炭化水素を「pH2超の水からn-ヘキサン溶媒に抽出され、その溶媒を沸騰させて水分を飛ばした後に残る化合物」と定義しています。
WSOの除去にグリコール酸を使うことが他の方法よりも望ましいのは、グリコール酸に以下の特性があるためです。
- 腐食性が極めて低い
- 不揮発性
- 非スケーリング性
- 第4級アンモニウム化合物(quaternary ammonium compound:QAC)とは異なり、既存の清澄剤との併用が可能
- QACとは異なり、幅広い処理範囲で効果を発揮する
- アニオン性界面活性剤や鉱酸との併用が可能